チュートリアル

音声のクリッピングとは?防ぐ方法:ゲインステージング、ヘッドルーム、安全なレベル

録音が大きくなりすぎるとバリバリと割れる理由、0 dBFSの意味、そして音割れを起こさないレベルの決め方を説明します。

執筆:Yunus S. 公開日: 更新日:

音声のクリッピング(音割れ)は、信号が0 dBFS、つまりデジタルシステムが記録できる最大レベルを超えようとしたときに起こります。波形の頂点が切り取られ、バリバリという音やきつい歪みとして聞こえ、失われた部分は元に戻せません。防ぐには、ヘッドルームを残して録音します。最も大きい部分のピークが-12~-6 dBFSになるよう、入力ゲインを設定してください。

まとめ

要点:

  • クリッピングとは、波形が0 dBFSで平らに切り取られること。バリバリとしたきつい音になる。
  • 後から完全に直すことはできないため、予防が大切。
  • ピークが-12~-6 dBFSになるように録音する。24ビットなら、低めに録っても損はない。
  • 編集中は、ゲインを足す、EQで持ち上げる、別のトラックを混ぜるたびにピークを確認する。
  • 完成したファイルのトゥルーピークは-1 dBTP以下に保つ。

音声のクリッピングとは?

デジタルオーディオは音を数値として記録しており、その数値には決まった上限があります。この上限を0 dBFS(フルスケールを基準としたデシベル)と呼び、それ以外のレベルはすべて、-6 dBFSや-20 dBFSのように、そこから下へ向かうマイナスの値で表します。スタンフォード大学CCRMAにdBFSスケールの簡潔な定義 があります。

信号が0 dBFSを超えようとしても、それより大きい数値はありません。本来もっと高くなるはずのサンプルはすべて上限の値で記録され、波の丸い頂点が平らな線になります。この急な角が、元の音にはなかった、きつく高い歪みを生みます。話し声では大きな音節でバリバリという音として、音楽ではざらついて潰れた音として聞こえます。

録音中にクリッピングして赤く点灯したデジタルレベルメーター
メーターが上端に達して赤くなったとき、波形のピークは切り取られています。

デジタルのクリッピングがアナログより悪く聞こえる理由

テープレコーダーや真空管アンプも過大入力で歪みますが、その歪み方は緩やかです。波が丸められ、エンジニアがあえて使うこともある温かみが加わります。デジタルシステムにはそうした緩やかな領域がありません。0 dBFSより下では信号は完全にクリーンで、超えたとたんに歪みます。攻撃的な音を狙ってドラムやベースを意図的にクリップさせるプロデューサーもいますが、それは専用のツールで行う制御された選択であり、声の録音で起きてよいものではありません。

クリッピングが起こる場所

クリッピングは4つの異なる段階で録音に入り込みます。対処法は、どの段階かによって変わります。

  • マイクプリアンプやインターフェース。入力ゲインが高すぎると、信号はパソコンに届く前にすでにクリップしています。その後で何をしても直せません。
  • 編集中やミックス中。ゲインを足す、EQで持ち上げる、2つのトラックを混ぜると、ピークが上がります。安全だったファイルが、1回の変更で0 dBFSを超えることがあります。
  • 書き出し時。編集ソフトの中で0 dBFSを超えたミックスは、16ビットや24ビットのファイルとして保存するときに切り取られます。
  • MP3やAACへの変換後。非可逆圧縮は波形をわずかに変えるため、0 dBFSのすぐ下にあったピークが超えてしまうことがあります。完成したファイルに約1 dBの余裕を残すのはこのためです。

ゲインステージング:適切な録音レベルの決め方

ゲインステージングとは、インターフェースやUSBマイクの入力ゲインから始めて、信号経路のすべての段階で適切なレベルを選ぶことです。目的はシンプルで、録音する中で最も大きい音が、0 dBFSより十分に下に収まるようにします。

  1. これから録音する内容の中で、最も大きい部分を話す、歌う、または演奏します。
  2. その部分のピークがメーターで-12~-6 dBFSになるように、入力ゲインを回します。
  3. そのままにします。普通の部分は-18 dBFS前後になりますが、それで問題ありません。

ピークと0 dBFSの間の余裕をヘッドルームと呼びます。24ビット録音ではノイズフロアが非常に低いため、小さく見える録音でも何も失われません。後から損なうことなく上げられます。一方、クリップした録音は傷んだままです。インターフェースにクリップランプしかない場合は、最も大きい音でも一度も点灯しなくなるまでゲインを下げ、そこからさらに少し下げてください。

オーディオインターフェースのゲインつまみを調整する手
クリッピングは、信号経路の最初のつまみである入力ゲインで防ぎます。

編集やミックスでクリッピングを避ける方法

きれいに録れた録音でも、後からクリップすることがあります。次の4つのステップで、作業中もピークを管理できます。

ステップ1: まず測定する

ファイルをLUFS&ピーク解析ツールで開きます。サンプルピークとトゥルーピークが表示され、どちらかが0 dB以上なら、ファイルはすでにクリップしているか、変換時にクリップします。

ステップ2: 上げる前に下げる

80~100 Hzより下のゴロゴロ音は、聞きたい音を何も加えないままヘッドルームを消費します。サウンドオプティマイザーのローカットで取り除くと、ピークが1~2デシベル下がることがよくあります。EQでは、足りなく感じる部分を上げるより、多すぎる部分を下げるほうが安全です。

ステップ3: 最も大きい部分を抑える

コンプレッサーは最も高いピークを下げるため、録音全体を安全に上げられます。サウンドオプティマイザーで圧縮比を3:1前後にし、最も大きい部分だけが抑えられるところまでコンプレッサーのスレッショルドを下げます。

ステップ4: レベルを上げて、もう一度確認する

ピークメーターを見ながら音量/ゲインを上げ、-1 dB以下に保ちます。それでも書き出し時に0 dBFSを超える場合は、クリップさせる代わりに、ツールがファイル全体を-1 dBFSまで下げます。書き出したファイルをもう一度測定してください。

ラウドネスの目標の選び方と、安全に足せるゲインの計算方法は、音割れさせずに音声をノーマライズする方法をご覧ください。

クリップした音声は直せますか?

部分的にしか直せません。波の頂点が切り取られると、失われた形はどこにも保存されていないため、どのツールも元の形を正確には知りようがありません。専用のデクリッピングソフトは、前後の音声から失われたピークを推定します。軽いクリッピングなら許容できる結果になることもありますが、ひどいクリッピングの歪みは取り除けません。後からファイルの音量を下げても、小さくなるだけで、きれいにはなりません。レベルを下げて録り直せるなら、それが常に最善の解決策です。

クリッピングのサインと対処法

気づくこと 考えられる原因 対処法
大きな言葉や打撃音のときだけバリバリ鳴る 入力ゲインが高すぎる ピークを-12~-6 dBFSにして録り直す
波形の頂点が平らに見える 録音または書き出しが0 dBFSを超えている 書き出す前にレベルを下げる。元の録音が原因なら録り直す
WAVはきれいなのに、MP3が歪む エンコード前のピークが0 dBFSに近すぎる WAVを1 dB下げてエンコードし直す
声と音楽をミックスした後に歪む 合計のレベルが高すぎる 音楽または全体のレベルを下げる

ピークを確認する

LUFS&ピーク解析ツールでファイルを開けば、サンプルピークとトゥルーピークが数秒でわかります。

LUFS&ピーク解析ツールを開く

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よくある質問

音声のクリッピングの原因は何ですか?

信号を扱うシステムに対して、信号が大きすぎることです。デジタルオーディオでは0 dBFSを超えようとすることを意味し、多くの場合、録音時の入力ゲインが高すぎたか、編集中にゲインを足しすぎたことが原因です。

クリッピングを避けるには、どのレベルで録音すればよいですか?

最も大きい部分のピークが-12~-6 dBFSになるよう、入力ゲインを設定してください。予想外の笑い声や大きな音にも十分なヘッドルームが残り、24ビット録音ならこのレベルで録っても音質は損なわれません。

ヘッドルームとは何ですか?

ヘッドルームは、音声の最も高いピークと0 dBFSの間の余裕のことです。6~12 dBのヘッドルームを残して録音すれば、突然の大きな音もクリップせずに収まります。