WAVは音声を非圧縮で保存し、FLACは何も失わずに圧縮し、MP3とAACは聞き取りにくい情報を取り除くことでファイルを大幅に小さくします。録音と編集はWAVで行い、容量を節約したい場合はFLACで保管し、公開はMP3かAACで行ってください。ロッシーのファイルをWAVに戻しても、取り除かれた情報は復元されません。
まとめ
要点:
- WAV:非圧縮。CD音質で1分あたり約10 MB。録音と編集向け。
- FLAC:ロスレス圧縮。WAVの約半分のサイズ。保管とロスレス再生向け。
- MP3:ロッシー。1分あたり約1~2.5 MB。どこでも再生できる。
- AAC:ロッシー。MP3より効率的。Apple製品やストリーミングサービスの標準。
- ロスレスからロッシーへの変換は、最後に一度だけ行う。
オーディオフォーマット比較:WAV・FLAC・MP3・AAC
| フォーマット | 種類 | 1分あたりのサイズ(ステレオ) | 適した用途 |
|---|---|---|---|
| WAV (.wav) | 非圧縮 | 16ビット/44.1 kHzで約10 MB | 録音、編集、ミキシング、マスタリング |
| FLAC (.flac) | ロスレス圧縮 | 約5~7 MB | 保管、ロスレスの音楽ライブラリ |
| MP3 (.mp3) | ロッシー圧縮 | 128 kbpsで約1 MB、320 kbpsで約2.4 MB | ポッドキャスト、共有、最大限の互換性 |
| AAC (.aac, .m4a) | ロッシー圧縮 | 約1~2 MB | ストリーミング、スマートフォン、Apple製品 |
非圧縮、ロスレス、ロッシー:用語の意味
フォーマットが録音された音声をどう扱うかは、3つの用語で表されます。非圧縮は、すべてのサンプルをそのまま書き込むことです。ロスレスは、ZIPファイルのようにデータをより小さくまとめ、展開するとまったく同じサンプルに戻ることです。ロッシー(非可逆)は、ファイルを大幅に小さくするために、音声の一部を永久に捨てることです。非圧縮とロスレスのファイルは音がまったく同じで、違いはサイズだけです。
WAVファイルとは?
WAV(Waveform Audio File Format)は、1991年にMicrosoftとIBMが発表したフォーマットで、音声制作の標準です。WAVファイルには通常、PCM音声が入っています。音の波を1秒間に数万回測定し、何も省かずに単純な数値として記録したものです。
その代償がサイズです。CD音質(16ビット、44.1 kHz)のステレオ音声は1分で約10 MB、24ビット・48 kHzでは約17 MBになります。その代わり、WAVは何度開いて編集し、保存しても何も失われません。そのため、録音と編集のすべての工程に適したフォーマットです。
FLACとは?
FLACはFree Lossless Audio Codecの略です。ZIPファイルが文書を圧縮するのと同じように音声を圧縮します。ファイルは通常WAVより40~60パーセント小さくなり、再生時には元のサンプルが正確に復元されます。
FLACは、完成したマスターの保管や、WAVほどの容量を使わずにフル音質で聴きたい音楽ライブラリに適しています。WAVが苦手とする、タイトル、アーティスト名、ジャケット画像の保存にも対応しています。弱点は実用面で、すべての編集ソフトや古い機器がFLACを開けるわけではありません。オーディオトリマーやサウンドオプティマイザーなどのツールは、FLACファイルをそのまま開けます。
MP3とAAC:非可逆圧縮の仕組み
MP3とAACは、聴く人が気づきにくい音を取り除くことで、ファイルをWAVの5分の1から10分の1にします。その基礎にあるのが、人の聞こえ方を研究する心理音響学です。大きな音は、近い周波数の小さな音を聞こえなくします。そこでエンコーダーは、聞こえる部分にデータを割り当て、残りを捨てます。フラウンホーファーIISでMP3を開発した一人であるカールハインツ・ブランデンブルクが、MP3 and AAC Explained でこの方法を解説しています。
どれだけ取り除かれるかは、1秒あたりのデータ量であるビットレートで決まります。128 kbpsのMP3は小さく、話し声には十分ですが、音楽では少し輝きが失われることがあります。192 kbps以上なら、普通に聴くぶんには、ほとんどの人が元の音と区別できません。作業の進め方で重要なのは、この損失が元に戻らず、積み重なることです。ロッシーのファイルを編集して再びロッシーで保存するたびに、情報が少しずつ失われます。
AACとは?
AAC(Advanced Audio Coding)は、MP3の後継として開発されました。同じビットレートなら、一般に元の音をより多く残せます。特に低いビットレートで差が出ます。Apple製品の標準フォーマットで、ほとんどのストリーミングや動画のプラットフォームでも使われています。ファイルの拡張子は多くの場合.m4aか.aacです。あらゆる機器とソフトが対応しているフォーマットは、今でもMP3です。
用途別のおすすめフォーマット
| 用途 | フォーマット | 理由 |
|---|---|---|
| 録音 | WAV(24ビット) | 何も失われず、後の処理に余裕が残る |
| 編集とミキシング | WAV | 何度保存しても劣化しない |
| 完成したマスターの保管 | WAVまたはFLAC | フル音質。FLACなら容量は約半分 |
| ポッドキャストのエピソード | MP3(128~192 kbps) | すべての配信サービスとアプリが対応。ダウンロードが軽い |
| 配信事業者に送る音楽(Spotify、Apple Musicなど) | WAVまたはFLAC | プラットフォームがマスターから独自の配信用ファイルを作る |
| メールやメッセージアプリで送るファイル | MP3またはAAC | 送れるサイズに収まり、どのスマートフォンでも再生できる |
この表の背景にあるルールは、音声を扱っている間はロスレスのままにし、ロッシーへの変換は最後に一度だけ行う、ということです。ラウドネスの目標については音割れさせずに音声をノーマライズする方法を、音楽のリリースについてはSpotify向けに音声をマスタリングする方法をご覧ください。
フォーマットを変換する方法
- WAVからMP3へ:音声変換ツールで、共有やアップロードに向いた小さなファイルを作ります。
- MP3からWAVへ:音声変換ツールで、編集ソフトが受け付けるファイルにします。音が良くなるわけではなく、扱いやすくなるだけです。
- M4AからMP3またはWAVへ:スマートフォンのボイスメモを、音声変換ツールでMP3またはWAVに変換します。
- AACからMP3またはWAVへ:拡張子が.aacのファイルには、音声変換ツールを使います。
どれもブラウザ内で動作するため、ファイルはアップロードされません。MP3のビットレートやWAVのビット深度を選べ、複数のファイルをまとめて変換できます。
変換ではできない3つのこと
- 音質は元に戻せません。MP3をWAVやFLACに変換しても、中身はMP3のままで、ファイルが大きくなるだけです。
- ビットレートを上げても情報は増えません。128 kbpsのMP3を320 kbpsに変換しても、ファイルが大きくなるだけです。
- ロッシーからロッシーへの変換は音質を下げます。MP3からAAC、またはAACからMP3への変換は、音声を2回圧縮することになります。可能な限り、ロスレスの元ファイルに戻って変換してください。